書籍では教えてくれないシリーズ

【上級】指名キーワードを配信すべき4つのメリットと2つの活用術

連載記事「書籍では教えてくれない運用型広告

リスティング広告を運用しているクライアントからよく質問される
「わざわざ広告費をかけて指名キーワードを配信する理由はありますか?」

みなさんはどう答えていますか?

指名キーワードの4つのメリット&デメリット
中~上級者向けの2つの活用術事例を紹介します。

指名キーワードの向き合い方について掘り下げてみましょう。

指名キーワードとは

自社のサイト名・サービス名・商品名・会社名がいわゆる指名キーワードと呼ばれるものになります。

指名と一般キーワードのデータ比較

指名と一般キーワードのデータ比較 ※画像は一部加工しています。

指名キーワードは、ユーザーニーズが顕在化されているため、一般キーワードと比べると下記のような特徴があります。

  • クリック単価が安い
  • コンバージョン数が多い
  • クリック率(CTR)が高い
  • コンバージョン率(CVR)が高い
  • コンバージョン単価(CPA)が低い
  • 品質スコアが高く評価されやすい
  • 広告表示オプションが表示されやすい
  • 掲載順位上位を取りやすい

一言でまとめると指名キーワードは
一般キーワードと比べてパフォーマンス(性能)が良いキーワード と言えるでしょう。

指名キーワードの4つのメリット

【メリット1】既存顧客の取りこぼしを防ぐ

下記の3つの事例では、指名キーワードで検索したユーザーが自社サイトに辿り着きにくいため、ユーザーの流入が阻害されやすい状況にあります。
取りこぼしを防ぐ意味で、指名キーワードは配信すべきでしょう。

◎機会損失が発生している3つの事例

1.指名キーワードの広告枠に競合の広告が配信されている
→自社の既存顧客が競合に流出するリスク

2.自社サイトのオーガニック検索順位が1位でない
→指名検索なのに自社サイトに辿り着けないリスク

3.指名キーワードが表記ゆれキーワードで頻繁に検索される形跡がある
→表記ゆれキーワードで検索した場合、自社サイトに辿り着けないリスク 

 

画像:指名キーワードの広告枠に競合の広告が配信されている状態

画像:指名キーワードの広告枠に競合の広告が配信されている状態

画像:表記ゆれキーワードで検索しても辿り着けない状態

画像:表記ゆれキーワードで検索しても辿り着けない状態

【メリット2】ユーザビリティが向上する

検索順位1位を確保していても、サービスや製品の多さから、ユーザーが目的のページに辿り着けていない場合があります。
そこで広告配信で利用できる広告表示オプションを活用することでユーザーが求めている目的のページに簡単にアクセスすることが可能になります。

大手パソコンメーカーDELLの例を見てみましょう。
サイトリンク表示オプションで「個人と法人」「ノートPCとデスクトップPC」でリンク先URLが分かれています。
目的のページにスムーズに辿り着けます。

画像:DELLの広告表示オプション使用例

画像:DELLの広告表示オプション使用例

【メリット3】キャンペーン情報を伝える

セールやキャンペーンなど既存顧客に対しても伝えたい情報がある場合、広告文や広告表示オプションのテキストにて記載すると良いでしょう。

画像:広告文でプロモーションテキストを記載する例

画像:広告文でプロモーションテキストを記載する例

設定一つで伝えたい情報をコントロールできるのは非常に便利です。
キャンペーン情報を伝える意図で期間中のみ指名キーワードを配信し、コンバージョン率を上げるのも良いでしょう。

 

【メリット4】ブランド認知や好感度を高める

特に検索順位1位が取れている場合、指名キーワードを配信することは無意味だと考えられがちです。
そのような状況下でも広告を配信することで好感、概要理解、購入意向が高まるブランド認知、形成効果はあります。
※詳細は下記URLを参照

目先のコンバージョン数だけではなく、ブランディングや長期的目標を見据えて判断しましょう。

引用:検索連動型広告のブランドへの影響調査

引用:検索連動型広告のブランドへの影響調査

http://adwords-ja.blogspot.jp/2009/06/blog-post_30.html
Google AdWords 公式ブログより(検索日2016年12月20日)

指名キーワードの4つのデメリット

 

【デメリット1】無駄なクリックコストが発生してしまう

自社社員による間違いクリックも少なからず発生してしまいます。
自社社員によるクリックは自社IPを除外設定に入れてリスクを軽減をする手もありますが、
こういった明らかに無駄なクリックであっても、厳密な切り分けが難しいのが現状です。

 

【デメリット2】ネガティブな理由で指名キーワードからの流入が増加する

ニュースやテレビ番組で取り上げられると瞬間的に指名キーワードの検索数が増加します。
事件やトラブルが原因でニュースで取り上げられてしまった場合、多くはビジネスの目標に繋がることはありません。注意が必要です。

日々のニュースに目を配り、アカウントの異変をいち早く察知して、一時的に配信を停止するなど迅速かつ適切な対応が非常に重要です。

 

【デメリット3】指名キーワードのコンバージョン数が多く成果の判断が難しい

仮数値を設定して、よく見かけるモデルケースを見てみましょう。

画像:指名キーワードのコンバージョン数が多く成果の判断が難しい例

画像:指名キーワードのコンバージョン数が多く成果の判断が難しい例

このように指名キーワードからのコンバージョン数が多い場合、指名&一般キーワードの合計CPAは1,818円です。

しかし一般キーワードはCPA10,000円と高く、ここに課題があることを見落としがちです。
そこで指名キーワードと一般キーワードそれぞれに役割を持たせて運用して

指名キーワードと一般キーワードはそれぞれ分けて目標設定する必要があります

例えば、指名キーワードはインプレッション数やクリック数、一般キーワードはコンバージョン数やコンバージョン単価で目標設定する。
といった個別の目標設定が重要です。

 

【デメリット4】指名キーワードが「一意でない」為、間違いクリックが発生してしまう。

指名キーワードが必ずしも一意である(ユニークである)とは限りません。
同名の会社が300社以上存在すると言われる「佐藤工務店」を例に挙げてみましょう。

同名他社が非常に多いため、ユーザーが「佐藤工務店」で検索していても、必ずしも自社の「佐藤工務店」を探しているとは限りません。

同名他社との間違いクリックを完全に避けることは難しいでしょう。
いくつか同名他社と混同されるリスクを軽減させる対策例を紹介しましょう。

 

◎広告文で所在地を記載して絞り込む
 →広告文で「○○県△△市の佐藤工務店」と会社の所在地を明記する
 →住所表示オプションを設定して住所を記載する

画像:会社の所在地を明記する例

画像:会社の所在地を明記する例

◎エリアターゲティングを活用して絞り込む
→キャンペーンの配信ターゲティング設定で○○県にのみ配信をする
→自社の住所を中心に半径10キロメートルにのみ配信をする

画像:エリアターゲティングを活用して絞り込む例

画像:エリアターゲティングを活用して絞り込む例

◎除外キーワードで絞り込む
 →検索クエリから自社が取り扱っていないサービスなどのキーワードを除外する
 →検索クエリから地名キーワードを除外する

◎検索広告向けリマーケティングを活用する
 →タグマネージャー等で滞在時間が長いユーザーや、直帰ユーザーを除いたユーザーリストを作成して、確度が高いユーザーへのリマーケティングを強化する。
※リマーケティングリストから見込み顧客以外を除外する。

指名キーワードの活用事例

ここまで指名キーワードを配信することのメリット、デメリットをまとめました。
更に発展させて、成果に繋がる指名キーワードの活用事例を紹介します。
ここから先の内容は、中~上級者向けの最新の内容になります。

 

【活用事例1】類似ユーザーリストに活用する

類似ユーザーリストは、元となるユーザーのリスト内の共通の興味関心や特徴を元に、類似する見込み顧客のユーザーリストを自動生成する仕組みです。

指名キーワードは類似ユーザーリスト機能と相性が非常に良いです。

というのも、指名キーワードからコンバージョンしたユーザーを元に作成された類似ユーザーリストは、以下の理由から通常の類似ユーザーリストと比べて、より高いパフォーマンスを発揮することが期待されます。

  • 元となるサンプル数(コンバージョン数)が多くなるため精度が高い
  • 顕在層ユーザーの関心事や特徴を元にリスト作成できる

さらに指名キーワードからのコンバージョン数獲得が多く狙える場合
【コンバージョンに至ったユーザーを元にした類似ユーザーリスト】を早い段階で容易に生成できるのが最大のメリットです。

 

【活用事例2】DFSAと組み合わせて戦略的な運用を行う

AdWordsのDFSA(Demographic for Search Ads)を活用することで、検索広告におけるユーザー属性(年齢、性別)のデータを抽出することが可能です。

指名キーワードにおけるDFSAデータは、指名キーワードであるが故にロイヤル顧客のデータが垣間見ることが出来るため非常に価値の高い情報です。

画像:年齢別CPA比較データ

画像:年齢別CPA比較データ

仮に、指名キーワードのDFSAからコンバージョン数が多いユーザー属性が【30代の女性】と判明した場合は、例えば以下のような施策に横展開することが可能です。
ターゲットへのアプローチの幅が広がります。

  • 30代女性に響く広告文を意識して作成する
  • 30代女性への配信を強化する(検索広告やディスプレイ広告全般)
  • SNS広告(Twitter広告、Facebook広告)などの入札戦略に活かす
  • ランディングぺージ制作時のペルソナ作成に役立てる

またコンバージョン数の比率が【30代の女性】から【40代の女性】にシフトしたケースでは、ロイヤル顧客の年齢層が変化した可能性が考えられます。
リスティング広告のデータを土台にして、商品開発やサービス見直し、プロモーションなど様々な改善に繋げることが可能です。

参考:DFSAとは Google Inside AdWords (検索日2016年12月20日)
http://adwords-ja.blogspot.jp/2009/06/blog-post_30.html 

おわりに

「広告費をかけて指名キーワードを配信する理由はありますか?」という疑問に対して、一概に指名キーワードを配信すべきかどうか断言することは難しいです。
そこで重要なことは、何を目的として指名キーワードを配信したいのか?どう活かしていくのか?を明確にして考え抜くことだと思います。
目的を具体化して1件でも多くの成果を上げる為に、日々様々なアプローチにチャレンジしていきましょう。 

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